第172章 抱きしめると安心感がある

南坂海乃はまだ水を飲んでいた。その言葉を聞いた瞬間、思いきりむせる。

げほっ、と咳き込んで、目尻がじわりと赤くなった。

逃げ出したい。けれど自分のスマホは、いま彼の手の中だ。結局、そこに立ち尽くすしかない。

野口颯汰はスマホを持ったまま、視線だけで彼女を縫い止める。光があるなら、形を持っているに違いない――そんな圧が、まっすぐに突き刺さる。

南坂海乃は手を差し出した。目は合わせられない。

「……ありがとう。ちょうどスマホ、探してたところだったの」

動揺は引っ込めた。平静を装う。

けれど、さっきの不自然さは十分すぎるほど彼の疑いを呼ぶ。

野口颯汰が、まるで誘うように言った。

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